企業では、顧客情報や商品情報、在庫、売上などのデータを、複数のシステムやファイルで管理していることがあります。情報が分散していると、同じ項目でも内容が異なったり、どのデータが最新なのかわからなくなったりすることがあります。
こうした課題の解消に役立つ考え方が、Single Source of Truth(SSoT)です。データごとに正しい参照元を定め、必要な部署やシステムがそれを基準にすることで、情報の食い違いを防ぎ、組織内で一貫した情報を利用できるようになります。
この記事では、SSoTの概念と、導入するメリット、課題、導入手順を解説します。

Single Source of Truth(SSoT)とは
Single Source of Truth(SSoT)とは、組織内で利用するデータについて、どの情報を正しいものとして参照するかを明確にする考え方です。日本語では「信頼できる唯一の情報源」または「単一の真実の情報源」と訳されます。
企業では、顧客管理や在庫管理、会計、マーケティングなど、業務ごとに異なるシステムやツールを利用することがあります。その結果、部署やシステムごとにデータが分散し、他の部署やシステムから利用しにくい「データサイロ」と呼ばれる状態が生じることがあります。たとえば、複数の部署が顧客情報をそれぞれ別々のCSVファイルや業務システムで管理していると、情報に差異が生じてしまい、どれが正しい情報かわからなくなってしまうことがあります。
データサイロによる情報の食い違いを防ぐために役立つのが、SSoTの考え方です。データごとに正しい参照元を決めておくことで、組織内でどの情報を基準にすべきかが明確になります。
このとき、すべてのデータを一つのシステムに保存する必要はありません。SSoTでは、データを一つの場所に集めることではなく、データごとに正しい参照元を定めることが重要です。顧客情報はCRM、在庫情報は在庫管理システム、商品情報は共有フォルダのCSVなど、それぞれのデータについて正しい参照元を定めておくことが重要です。
Single Source of Truthの基本原則
- 正しい参照元を決める:同じデータが複数の場所にある場合でも、どの情報を正しいものとして扱うかを明確にします。
- データオーナーシップを明確にする:顧客情報、商品情報、在庫情報など、データごとに管理や更新の責任を持つ担当者や部署(データオーナー)を決めます。
- データの品質を保つ:重複や入力ミス、古い情報を減らし、正確で一貫したデータを維持します。
- 更新ルールを決める:誰がどのシステムで情報を更新し、変更時にどのような手順を踏むのかを明確にします。
- 参照方法を周知する:どの情報をどこから参照するのか関係者に共有し、組織内で同じルールに沿ってデータを利用できるようにします。

Single Source of Truthを導入するメリット
1. 業務を効率化できる
SSoTを導入すると、必要な情報の確認や集計にかかる時間を減らせます。
複数のシステムやファイルから最新データを探す手間や、数値を突き合わせる作業を減らせるため、日々の業務や意思決定をスムーズに進めやすくなります。
2. データの信頼性を高められる
SSoTを導入すると、社内で同じ基準でデータを利用でき、データの信頼性が高まります。
古い情報や重複データを参照するリスクを抑えられます。営業やカスタマーサポートも同じ顧客情報を確認できるため、顧客に同じ内容を何度も確認するといった対応の重複や行き違いも防ぎやすくなります。
3. セキュリティ管理がしやすくなる
SSoTでデータの保存場所や参照元を明確にすると、誰がどの情報にアクセスできるかといったアクセス権限も管理しやすくなります。
顧客情報などの保存場所を把握できるため、情報の訂正や削除が必要な場合も、対象となるデータを特定しやすくなります。また、誰がどのデータにアクセスできるかを整理し、不要なアクセスを制限することで、セキュリティの向上にもつながります。

Single Source of Truthを導入する7つの手順
1. データソースを洗い出す
まず、社内でどのようなデータを、どこで管理しているかを整理します。
顧客情報、商品情報、在庫、注文、売上などについて、利用しているシステムやCSVファイル、クラウドサービスなどを一覧にしましょう。その際、保存場所だけでなく、誰が管理しているのか、どのくらいの頻度で更新されているのか、どの部署が利用しているのかも確認します。
たとえば顧客情報なら、CRMだけでなく、ECサイトやメール配信システム、カスタマーサポート用のシステムなどにも同じ情報が保存されている可能性があります。同じデータが複数の場所にある場合は、どこにどのような情報が保存されているのかを整理し、データの重複や更新状況などを確認しましょう。
2. 正しい参照元を決める
次に、それぞれのデータについて、どのシステムを参照元とするかを決めます。
参照元を決めるときは、普段どのシステムのデータを最新の情報として扱っているかを確認します。たとえば、在庫数を倉庫の在庫管理システムで随時更新している場合は、そのシステムを在庫情報の参照元とします。
なお、顧客や商品、取引先など、事業の基礎となるデータを整理し、正しい情報として管理する仕組みは「マスターデータマネジメント(MDM)」と呼ばれます。SSoTを構築する際にも、データの種類ごとに基準となる情報源を明確にします。
たとえば、顧客情報はCRM、会計情報はERPなど、データの種類ごとに参照元を設定します。
3. データを整理する
データを移行したり連携したりする前に、重複や誤り、表記の違いなどを整理し、参照元として使う情報を整えます。
たとえば、同じ顧客が複数登録されている場合は一つにまとめます。また、「株式会社」と「(株)」、全角と半角など、同じ意味でも異なる形式で登録されているデータは、表記方法をそろえましょう。
住所や電話番号などの必須項目が空欄になっていないか、古いデータがそのままになっていないかなども確認します。正しい参照元を決めるだけでなく、そこで管理するデータ自体を整えておくことも重要です。
4. データ管理のルールを決める
誰がどのような手順で正しいデータを管理するのかを決めます。
たとえば、商品価格は商品管理担当者のみ変更できる、顧客情報を修正するときはCRMを更新するなど、データごとに担当者と更新方法を明確にします。
アクセス権限、更新頻度、入力形式、変更時の承認方法なども決めておきましょう。
また、「商品には必ずSKUを登録する」「顧客IDは重複させない」など、データ入力のルールを設けると、運用後も情報の一貫性を保ちやすくなります。
5. データを移行または連携する
データを整理し、管理ルールを決めたら、必要なものを移行し、関連するシステムと連携します。
ECサイトでShopify(ショッピファイ)を利用している場合は、商品、顧客、注文、在庫など、ECサイト運営に必要な主要データをShopify上で管理できます。Shopify Flowを使えば、注文や顧客情報の更新などをきっかけに処理を自動化でき、API連携によって外部のCRMや在庫管理システムなどとデータを連携することも可能です。
在庫についても、Shopifyの在庫管理機能を使って、店舗や倉庫などの拠点ごとに管理できます。Shopifyをデータの参照元の一つとして活用し、必要に応じて外部システムとも連携することで、手作業による転記や更新漏れを減らせます。
6. 社内で使い方を共有する
SSoTを機能させるには、関係する従業員が正しい参照元と運用ルールを理解し、同じルールで運用できることが重要です。
どの情報をどこで確認するのか、変更するときはどのシステムを更新するのかを、関係する部署に周知します。
7. 業務フローを見直す
SSoTの導入後は、実際の運用状況を確認し、必要に応じて業務フローを見直します。
更新した情報が必要なシステムへ正しく反映されているかを定期的に確認しましょう。
新しいシステムの導入や業務内容の変更により、参照元や連携方法が変わる場合もあります。現在の業務に合っているかを定期的に見直し、管理ルールやシステム連携を継続的に改善していきましょう。

Single Source of Truth導入の課題
専門知識が必要になる場合がある
複数のシステムに分散したデータを整理し、連携させるには、データベースやシステム連携などの専門知識が必要になる場合があります。
特に、扱うデータ量が多い場合や複数の業務システムを利用している場合は、社内のIT担当者だけで対応しきれないこともあります。必要に応じて、外部の専門家への相談も検討しましょう。
社内への定着が必要
SSoTを導入しても、従業員がこれまでと同じ方法で個別にデータを保存し、更新していると、情報の食い違いが再び生じる可能性があります。
どの参照元を利用するのか、誰が更新するのかなどのルールを明確にし、関係する部署に共有することが重要です。必要に応じてマニュアルを作成したり、研修を行ったりして、新しい運用方法を定着させましょう。
継続的なメンテナンスが必要になる
SSoTは、一度導入すれば終わりではありません。新しいシステムが追加されたり、業務内容が変更されたときは、それに応じてデータの参照元や連携方法を見直す必要があります。
担当者や業務フローが変わった場合は、アクセス権限や更新ルールも見直し、現在の運用に合った状態を保つことが大切です。
また、更新した情報が関連するシステムに正しく反映されているかを定期的に点検しましょう。古い情報や入力ミスが残っていないか、データの連携に問題が生じていないかもあわせて確認します。
Single Source of Truthの活用例
- 顧客情報:顧客の氏名、住所、連絡先、購入履歴などの参照元を定めることで、部署をまたいで同じ情報を共有できます。
- 商品マスター:商品名、SKU、価格、説明文、画像などの基準となる情報を決めておくことで、ECサイトや実店舗、卸売など複数の販売チャネルで商品情報をそろえやすくなります。商品情報を更新する際の反映漏れも防ぎやすくなります。
- 在庫情報:商品ごとの在庫数や保管場所などの参照元を明確にすることで、ECサイト、実店舗、倉庫で同じ在庫情報を利用できます。実際の在庫数とECサイト上の在庫表示がずれるといった問題を防ぎやすくなります。
- 受注情報/配送情報:注文内容、配送先、出荷状況、追跡番号など、注文後や配送に関する情報の参照元を明確にすることで、受注担当、倉庫、カスタマーサポートなどで同じ情報を共有できます。注文内容の変更やキャンセル、配送状況の更新なども関係部署に反映しやすくなります。
- カスタマーサポート履歴:注文履歴、配送状況、返品や返金、問い合わせ履歴などを共通の情報として参照できるようにすると、対応する部署や担当者が変わっても同じ情報をもとに一貫性のある対応ができます。カスタマーサポートの改善につながります。
- マーケティングデータ:顧客属性、購入履歴、キャンペーンへの反応などの参照元をそろえることで、メール配信や広告、顧客セグメントの作成に同じデータを利用できます。部署やツールごとに異なる顧客情報を使うことによる配信ミスや分析結果のずれも防ぎやすくなります。
まとめ
Single Source of Truth(SSoT)は、組織内で利用するデータについて、どの情報を正しいものとして参照するかを明確にする考え方です。データごとに参照元を定めることで、情報の食い違いを防ぎ、最新かつ正確な情報を共有しやすくなります。
導入する際は、現在利用しているデータやシステムを把握したうえで、データごとに参照元を決め、データ連携や管理ルールを整えることが重要です。また、導入後も運用状況を確認し、業務やシステムの変化にあわせて継続的に見直しましょう。
SSoTを適切に運用することで、データ管理の効率化や信頼性の向上につながり、より正確な情報をもとに業務や意思決定を進めやすくなります。
Single Source of Truthに関するよくある質問
SSoTはどのような企業に必要?
複数の部署やシステムで同じデータを扱っている企業で役立ちます。情報の重複や更新漏れが起きている場合は、SSoTの導入を検討するきっかけになります。
SSoTとデータベースの違いは?
データベースはデータを保存、管理する仕組みですが、SSoTは「どの情報を正しいものとして扱うか」を決める考え方です。SSoTの参照元としてデータベースを利用することもあります。
SSoTとデータレイクの違いは?
SSoTは、どの情報を正しいものとして扱うかを決める考え方ですが、データレイクは、形式の異なる大量のデータを加工せずに蓄積しておくための仕組みを指します。
SSoTとデータウェアハウスの違いは?
SSoTは、どの情報を正しいものとして扱うかを決める考え方ですが、データウェアハウスは、複数のシステムから集めたデータを整理し、分析しやすい形で保存するための仕組みです。データウェアハウスに集約された情報を基準として、SSoTを実現することもできます。




